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開発ストーリー 第1回

Battery Emulator 9.6のリリースにあたり、電源の違いによって起こる、サウンドへの影響を数回にわたって解説していきます。

エフェクターと電源の密接な関係は皆さんご存知の通りで、良いサウンドを得るためには良い電源が必要なことはお分かりになると思います。では、良い電源とは一体どの様なものなのでしょうか。
よく聞かれるのですが
「バッテリーとACアダプターでは音が違う。どちらの方が音が良い?」という質問について見解を述べたいと思います。
音に影響する要因は、電源ノイズ、電源電圧、電源出力インピーダンスの3つあると考えています。まずは良い電源とは何か目標を定めるために、それぞれの項目についてACアダプターとバッテリーとで比較をしていきましょう。

1:電源ノイズ

ACアダプターの電源ノイズは大きく分けて2つの成分があります。1つめは商用電源(AC100V電源)の持つ50Hzもしくは60Hzを周期とするリップルノイズ(ブーンと唸るようなノイズ)。2つめは高周波ノイズです。この2つの他に電源ラインから混入するノイズや半導体が持つ固有のノイズもありますが、最初の2つと比較すると小さなレベルですので、ここでは述べません。

まず1つめの50Hz/60Hzのリップルノイズは、シリーズレギュレータ方式(別名ドロッパー方式)の電源に含まれています。電源の性能により、このリップルノイズの量が違います。増幅回路を持つ多くのエフェクター内ではリップルノイズが増幅され、信号として出力しハムノイズの原因の一つとなります。このリップルノイズが大きいとギターやベースの実音と重なり抜けの悪い濁った音になります。
右の写真(1)はA社の9V安定化電源の波形をオシロスコープで調べたものです。商用電源(50Hz)のリップルが出力に乗っており、12.8mV(P-P)ものノイズが出力されています。

写真(1):リップルノイズの波形

そして2つめの高周波ノイズは、スイッチング方式の電源に多く含まれています。スイッチング電源に含まれる一番大きなレベルの高周波ノイズは、電源のスイッチング周波数に同期した高周波ノイズです。この高周波ノイズは耳に聞こえない周波数で発生していることが多いのですが、分周作用により耳に聞こえるノイズ音となったり、ギターやベースの実音と重なることで耳に聞こえる周波数のノイズを発生します。
右の写真(2)はB社の9V安定化電源の波形をオシロスコープで調べたものです。スイッチング電源の波形です。ノイズの波形はパルス状の鋭い波形をしています。驚くことに発振周波数はかなり低く数kHzで発振させています。通常ですと「キーン」という発振音が聞こえます。パルス幅が変化していることから、発振周波数は一定ではありません。そのためこのスイッチング電源のノイズは耳で聞き取りにくくなっていますが、音質を濁らせる原因であることは変わりません。


写真(2):スイッチング電源の波形

一方、バッテリーはノイズ面から言うと理想的な電源です。商用電源を使うこともありませんし、スイッチングすることもありません。要するにリップルノイズやスイッチングノイズが発生しないので、ノイズ面から言うとバッテリーに軍配があがります。
右の写真(3)は9Vバッテリーの波形です。2つの波形に比べて、波形はノイズもなく、綺麗なことが分かると思います

写真(3):9Vバッテリー(006P)の波形

2:電源電圧

電源電圧が変化することで音質が変化することは皆さんご存知だと思います。例えばオーバードライブの場合ですが、バッテリーの寿命が近づいてきて、新品のバッテリーに交換する前の音質と、新品のバッテリーに交換した後の音質の変化は皆さんも感じられているでしょう。これはバッテリーの電圧の降下が引き起こす音質の変化で、特殊な例を除き(バッテリーの電圧降下を利用した音作り)新品のバッテリーに交換した後の音質のほうが音に張りがあり、歪み方も出力レベルも設計者の意図通り出力します。新品のバッテリーの電圧を測ってみると、メーカーによってばらばらですが、音質が良いと言われているバッテリーの電圧は9.5〜9.8V(無負荷時)でした。

一方、ACアダプターの電圧を無負荷の状態で測ってみると、一般的なA社のACアダプターの電圧を測るとDC8.9V。B社のACアダプターはDC9.0Vで、これもまたメーカーによって違いました。また、C社の電圧を測るとなんとDC14.6Vでした。それもそのはず、このアダプターは安定化電源ではありませんでした。安定化電源とは、出力電圧を一定に保つ回路が内蔵されている電源です。C社のタイプのACアダプターは安価なのですが、エフェクターによっては動作しないこともありますので注意が必要です。

これらの結果から考えると、エフェクターに供給される電圧が異なるわけですから音質も異なるわけです。


3:電源出力インピーダンス

電源ノイズや電源電圧から比較すると影響は小さいかもしれませんが、電源の持つ出力インピーダンスも重要な要素です。出力インピーダンスと言うと難しい話のように聞こえてしまうかもしれませんが、簡単に言い換えると「流れる電流が変わっても一定の電圧に保ち続けられる能力」のことです。インピーダンスが低い方がこの能力が高くなります。バッテリーの場合は内部抵抗と呼ばれることが多いです。

ACアダプターでは、出力電流が急激に大きくなっても十分な電流を供給することが可能で、かつ安定した電圧に保つことができるものが性能の良いアダプターとなります。バッテリーも同様です。安価なバッテリーの多くは、エフェクターに接続した状態で電圧を測ると9V以下になることもあり、内部抵抗値が高いことを表しています。

これらの結果から考えると、エフェクターを動作させた状態で電圧が低下しないACアダプターもしくはバッテリーが性能が良いものと考えられます。


今回の総括
第一回は「バッテリーとACアダプターでは音が違う。どちらの方が音が良い?」という質問を元に、電源ノイズ、電源電圧、電源出力インピーダンスの3つの視点で話しを進めてきました。ACアダプターであれば「ノイズが少なく、エフェクターに接続して動作させても電圧がDC9.5V〜9.8Vで安定している」、バッテリーであれば「エフェクターに接続して動作させても電圧がDC9.5V〜9.8Vで安定している」という条件が満たされるものが良いサウンドを得られると考えています。

結果として、音質の良い条件を満たしているものは音質が良いと言われているバッテリーのみで、市販されているACアダプターではこの条件に当てはまる製品は見つけることができませんでした。「ない物は作る!」の精神で開発がスタートするわけです。次回は、実際の開発内容についてお伝えしたいと思います。



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