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第3回
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今回と次回の2回に分けて、意外に知られていない楽器用ケーブルの構造や要求される機能性をケーブルを構成する要素ごとに解説し、そこに込められたプロビデンスならではのこだわりをご紹介していこう。ケーブルは大まかに分けると線材とプラグの2つの部位から成り立っている。既成のパーツを組み合わせて製品として発売しているブランドも多い中、そのいずれも自社開発のオリジナル・パーツを採用しているプロビデンスのようなメーカーは意外に少数で、この点だけを見てもプロビデンスのケーブルに対するこだわりが解るだろう。
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5:ケーブルの構成要素
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ユーザーがケーブルを比較する際、音質の違いを数値で表すスペックの点で見てしまうことも多いだろう。録音やPA、オーディオ機器に使われるケーブルは“原音を忠実に伝達する”という目的のもと、広い周波数特性などの数値を追求するケースも多い。だが、“心地よいギターのサウンド”はオーディオ的なサウンド特性のよさとは微妙に異なり、オーディオの分野で定評のある素材や構造を採り入れ、スペック重視の理詰めで設計されたケーブルが、必ずしもギターで使用して魅力的なサウンドを得られるというわけではない。プロビデンスはミュージシャンに近い立場での徹底したヒアリング・テストを重ね、プロ・ギタリスト達によるモニタリングを経て各素材や構造を決定しており、この点は今回のコラムを読む上でも念頭に置いてもらいたいポイントだ。また、ケーブルを構成するひとつひとつのパーツのみに比重を置くのではなく、組み合わせによってトータルバランスでサウンドを決定しているという点も重要で、全てのパーツが自社開発であるプロビデンスは、この点でもパーツごとにフレキシブルなスタンスで特性を調整することができるのが強みとも言えるだろう。
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それでは、まずは線材の部分から詳しい構造を解説していこう。線材は大まかに分けると、中心から見てコンダクター、シールド、そしてジャケットの3つの層から構成されている。電源ケーブルやスピーカー・ケーブルなどは2本の導線が並行し、それぞれが電気信号のプラスとマイナスを扱う構造なのに対し、楽器用ケーブルは1本の芯線(コンダクター)の周りを網状に織り込んだ銅線が覆う様な構造となっているものが多い。楽器用ケーブルが扱う信号が電源やスピーカー出力と比べて非常に小さく、ケーブルに侵入した電磁波がノイズとして同時に増幅されることで音に混入し、耳についてしまうので、それを防ぐために考案されたシールド構造を採り入れているのだ。芯線の周りを覆うシールドがマイナス側の導体を兼ねており、これが電磁波をキャッチすると同時にアースへと逃がし、芯線側を流れる楽器の信号に混入しないように防御する役割を果たしているのだ。
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●ケーブルの構造図

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6:コンダクター
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続いて線材の構成要素を順を追って説明していこう。線材の中心に位置するコンダクターは文字通りケーブルの核となるもので、日本語で導体、導線とも呼ばれ、楽器の信号を伝達する心臓部だ。楽器用ケーブルのほとんどはコンダクターの素材として銅を使用している。銅は平温時の比抵抗が銀に次いで小さく、銀に比べて安価で柔らかく、ケーブルの素材として理想的なものだ。このコンダクターに使われる銅は電気信号の伝達のためには純度が高いものが理想とされ、オーディオ用や楽器用ケーブルにはOFC(オキシジェン・フリー・コッパー)という酸化物を除去した高純度銅が広く使われている。OFCの中でも純度のランクや製造工程の違いによって細分化されているが、ケーブルに興味がある人ならご存じの通り、この微妙な違いがケーブルのサウンド・キャラクターに大きく影響してくる。プロビデンスのギター用ケーブルは、エントリー・モデルから全てOFCを使用し、モデルごとにコンダクターの種類や撚り線の構造を使い分け、使用する楽器や狙ったサウンドに焦点を絞った特性を備えたケーブルをラインナップしている。だが、全てのモデルに共通する“プロビデンスのケーブルらしさ”という感覚に繋がるナチュラルなサウンドというコンセプトを実現するため、コンダクターに使用されている素材は意外にもオーソドックスなサウンド特性を備えたものが使われている。ここで言う“ナチュラルなサウンド”とは、ギターの“おいしい”ポイントとなる中域に程よい膨らみを持たせつつ、ギター・サウンドの邪魔になる不必要な超高域/低域をギリギリまでカットしたものだ。根本となるサウンド・キャラクターをしっかりと狙い定めた上で、微妙なさじ加減によってモデルごとのキャラクターを変え、更にコンダクター以外の要素も併せてトータルでバランスを取ることで、プロビデンスのケーブルのサウンド・キャラクターは生み出されているのだ。
また、99.9999…%など銅の純度の数値を追求した素材を使用したケーブルもオーディオの分野では存在するが、実際にはケーブルとして製造する過程で酸化が進んでしまい、ケーブルの状態では数値が意味をなさないことがある。また超高純度銅を使用したケーブルは新品時からの経年変化が大きい傾向があり、時間が経てばサウンドが変わってしまう比率が大きいという点も見逃せない。プロビデンスのケーブルのコンダクターの素材は一般的な水準のOFCだが、長期間に渡って高音質をキープし続けるという耐久性に関しても考慮されたものが使用されている。
ちなみに、芯線に一本のみの太い銅線を使用した単芯構造というケーブルも存在し、細い銅線を束ねた撚り線で理論上発生する位相の乱れによる低域の歪みなどのデメリットの解消を目指した製品も世の中には存在する。だが、プロビデンスでは、致命的なトラブルのリスクや柔軟性の問題を回避するため、オーソドックスな線構造を採用している。伝統に裏打ちされた信頼性の高さを重視したスペックだが、この撚り線も、一本あたりの銅線の経や本数などの組み合わせによりサウンドなどの特性が変化するポイントでもある。プロビデンスはこれまでの開発期間の中で膨大な数の試作品を重ね、経験によってそのサウンド変化の傾向を掴み、ベストな構造を採用している。
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7:インシュレーター
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次にコンダクターを覆うインシュレーターについて説明しよう。インシュレーターとは絶縁体であり、プラスの信号が通るインシュレーターとマイナス側のシールド部の間の信号の伝導を絶ちきる役割を果たしている。絶縁体とはいえ、まったく電気を通さないわけではなく、コンダクターを通る電気信号が、わずかにアースに流れ、それがどの周波数ポイントでロスが発生するかが素材ごとのサウンド特性の違いとなって現れる。更に、コンダクターとシールドとの間でキャパシタンス(静電容量)と呼ばれる現象が発生し、これがインシュレーターの素材や厚みによって異なり、音質に関わってくる(静電容量については、VITALIZER徹底解説 第1回を参照)。
オーディオ用ケーブルのインシュレーターとしては、良好な静電容量の数値を示すテフロン系の素材が遣われることもある。だが、テフロンは硬くてギター用ケーブルに求められる柔軟性に欠けてしまい、取り回しの良さを損なってしまう。プロビデンスでは、サウンド特性と柔らかさのバランスに優れたポリエチレン系素材をメインに使い、一般的にナチュラルといわれるサウンド・キャラクターに繋がるマテリアルを使用している。S102はレコーディングなどでの使用にフォーカスを絞り、インシュレーターにNAPエラストマーという新素材を使用している。これは柔軟性に関してはポリエチレン系素材にわずかに譲る部分はあるものの、音質の良さを最優先し、一般的な素材のケーブルと比べて高域の良好な特性を実現し、ワイド・レンジながらギター・サウンドで重要な中域を失うことなく、ローがぼやけない明瞭でしっかりしたサウンドを生み出している。他に類を見ないパッチ・ケーブル専用として開発されたP203ではNAPエラストマーの外側をスペシャル・ポリエチレンで覆う2重構造を採用している。これはパッチ・ケーブル用として最も重視される柔軟性とサウンドとの高度な両立を目指して生まれた独自の仕様だ。
次回は引き続きシールド部、ジャケット部などの解説からプロビデンスならではの生産管理について説明をしていこう。
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